くじらのなみだ
それは、ずっとずっとむかし、せかいにうみがなかったころのおはなしです。
ひろいせかいのまん中に、大きなみずうみがありました。
みずうみには、大きな大きなくじらがすんでいました。
あまりに大きなくじらなので、そこにおなかがついてしまい、水にもぐることができません。
くじらは、いつもせなかを水の上にだしておよいでいました。
いつもせなかが、水からでているので、くじらにせなかには、いつのまにかくさがはえ、
木がそだち、どうぶつたちがくらしはじめました。
こころのやさしいくじらは、せなかのどうぶつたちをおとしてはたいへんと、
ゆっくりとおよぐようになりました。
うんどうぶそくのくじらはますます大きくなり、せなかは大きな森になって
どうぶつたちのなかまもふえていきました。
ある日、くじらのせなかの森で、どうぶつたちがおまつりをすることになりました。
森のまん中のひろばに、たくさんのどうぶつがあつまってきます。
ふえやたいこのおとにまじってきこえる、にぎやかなわらいごえを、
くじらは、しずかにきいていました。
ことりがうたい、うさぎがそれにあわせておどりはじめました。
くじらは、せなかのにぎやかなこえが、きになってしかたありません。
にんきもののさるがでてきました。
ひょうきんなさるのおどりに、どうぶつたちは大わらい。
くじらは、とうとうがまんできなくなり、せなかを見ようとからだをよじってしまいました。
このとき、たくさんのどうぶつがふりおとされ、たくさんのどうぶつがしんでしまいました。
くじらは、じぶんがとんでもないことをしたことにきづき、あわてましたが、
もうどうすることもできません。
たくさんのどうぶつがしんだことをしったくじらは、まいにちないてくらしました。
つきひがながれても、くじらがなきやむことは、ありませんでした。
くる日もくる日もないてくらすくじらのなみだは、みずうみからあふれだし、
せかい中にながれていき、やがてうみになりました。
だから、うみの水は、なみだのあじがするのです。